年別分解でEAを疑う|当たり年依存の見抜き方
目次
結論:全期間の数字だけでは「当たり年」は見えない
バックテストの損益曲線が右肩上がりで、PFも高い。それでも、利益の大半がたった1年の大相場で生まれ、残りの年は横ばいかマイナスだった、というEAは珍しくありません。全期間の集計値は、この偏りを平均してならしてしまいます。
そこで私たちがEAを評価するときに最初にやるのが、**損益を年ごとに分けて見る「年別分解」**です。一番良かった年を外しても成績が残るかどうか。これが頑健性(ロバストネス)を測る、いちばん手軽で効く確認方法だと考えています。
なぜ1年の当たりで全体が作られるのか
相場には「レジーム」がある
為替やゴールドの値動きには、強いトレンドが続く時期、狭いレンジが続く時期、ボラティリティが急に大きくなる時期といった「レジーム(相場の状態)」があります。どのEAにも得意なレジームと苦手なレジームがあります。
トレンド追従型は大きなトレンドが出た年にまとめて稼ぎ、レンジの年には小さな負けを積み重ねるのが典型的な形です。勝率が低めのブレイクアウト系は特にこの傾向が出やすいと私たちは見ています。
複利が偏りをさらに大きくする
複利運用のバックテストでは、後半に大きく勝った年の影響が金額ベースで膨らみます。累計リターンの数字が大きいほど、どの年がそれを作ったのかを確かめる必要があります。
最適化が特定の年に合わせてしまう
パラメータ最適化をすると、検証期間で最も値動きが大きかった局面に合わせ込んだ設定が選ばれやすくなります。その局面を再現する相場が来なければ、成績は再現されません。
年別分解の実務手順
MT5のストラテジーテスターでバックテストを回したら、次の順番で確認します。
- レポートから取引履歴を書き出す:テスター結果の「バックテスト」タブで右クリックし、レポートを保存します。取引一覧に決済日時と損益が入っています。
- 決済日の年ごとに損益を合計する:表計算ソフトで年の列を作り、集計します。複利の影響を避けたい場合は固定ロットでもう一度回すのがおすすめです。
- 年ごとのPFと取引数も出す:損益の金額だけでなく、その年の総利益÷総損失と取引数を並べます。
- 最大の年を除いて全体を計算し直す:ここで成績が崩れるかどうかが本題です。
- 負けた年の中身を見る:小さく負けているのか、大きなドローダウンを出しているのかで評価は大きく変わります。
判定の目安
| 確認項目 | 安心しやすい形 | 警戒すべき形 |
|---|---|---|
| 利益の集中度 | 複数の年に分散している | 全利益の半分以上が1年に集中 |
| 最大の年を除いたPF | PF1.0以上を保つ | PF1.0を割る |
| 負けた年の負け方 | 小さな損失で耐えている | 一度に大きく資金を減らす |
| 年ごとの取引数 | 大きく変わらない | 特定の年だけ極端に多い |
数値の基準はあくまで目安で、私たちもこれだけで合否を決めてはいません。
私たちのEAに当てはめると
私たちのEAの多くは長い期間で検証しています。たとえばGOLD NEURON(XAUUSD M30)は検証22.5年です。検証期間が長いほど多くのレジームを含むので、年別分解の意味も大きくなります。
一方で、勝率が低いトレンド追従型は利益の年が偏りやすい構造です。MEGAMAX DONCHIAN(USDJPY H1)は勝率34.98%・最大連敗11です。DONCHIAN ENGINE(USDJPY H1)は勝率34.5%・最大連敗11です。この形のEAで、利益が出ない年が続く可能性を否定することはできません。検証期間全体で黒字でも、使い始めた年が苦手なレジームにあたれば、しばらく損益が伸びないことは十分にあり得ます。
なお、この記事では各EAの年別の内訳までは載せていません。全EAの全期間の実測値は実測ランキングにまとめています。
限界と注意点
- 年という区切りに相場上の意味はない:レジームの切り替わりは年の途中で起きます。四半期や半年単位でも見てみると、偏りの見え方が変わることがあります。
- 取引数が少ないEAには向かない:年ごとの取引が数件しかないと、年別のPFはほとんど偶然で決まります。
- 過去のレジーム分散は未来を保証しない:検証期間に無かった種類の相場が来れば、年別に安定していたEAも崩れる可能性があります。
- デモ口座でのフォワードテストは期間が短い:私たちも公開していますが、開始からの期間がまだ短く、年単位の評価はできません。短期の成績からレジーム耐性を判断するのは避けてください。
ほかの検証の観点はEA・MT5ノウハウにもまとめています。
まとめ
- 全期間のPFや累計リターンは、特定の1年の当たりを平均してならしてしまう
- 年別分解は「一番良かった年を外しても成績が残るか」を見る作業
- 手順は、取引履歴の書き出し → 年ごとの損益・PF・取引数の集計 → 最大の年を外して再計算 → 負けた年の負け方を確認
- 勝率の低いトレンド追従型は利益の年が偏りやすく、私たちのEAも例外ではない
- 年という区切りの恣意性、取引数の少なさ、未知のレジームという限界がある
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