取引数が同じでも信頼度は違う|独立性という条件
目次
結論:取引数は「独立した試行の数」として数え直す
バックテストの取引数が多いほど結果は信頼しやすくなります。ただしこれは、1回1回の取引がお互いに独立しているときに限った話です。同じ時刻に同じ方向で複数のポジションを持つEAや、同じ相場の動きに反応する複数銘柄のEAでは、レポートの取引数より実質的なサンプル数がかなり少ないことがあります。
私たちもEAを評価するときは、「何回取引したか」より先に「独立した判断が何回あったか」を見るようにしています。この記事では、その考え方と確認の手順をまとめます。
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なぜ相関があるとサンプル数が減るのか
同じ判断を5回数えているだけかもしれない
仮に、あるEAがシグナルが出るたびに5本のポジションを同時に建て、5本とも同じ値動きで決済されるとします。レポートには取引100回と出ますが、相場に対して下した判断は20回だけです。100回のコイン投げと、20回投げて結果をそれぞれ5回書き写したものとでは、偶然を排除できる度合いがまったく違います。
統計では、取引どうしの相関の強さに応じて実質サンプル数が小さくなると考えます。単純なモデルで言えば、取引数をn、取引どうしの平均的な相関をρとしたときの実質サンプル数はおおよそ n ÷ (1 + (n − 1) × ρ) です。ρが0なら取引数そのままですが、ρが少し正になるだけで実質サンプル数は大きく減ります。実際の相関はきれいに一定ではないので、この式は感覚をつかむための目安として使ってください。
「別のEA」でも独立とは限らない
この問題は1本のEAの中だけでは終わりません。たとえば私たちの MEGAMAX DONCHIAN と DONCHIAN ENGINE は、どちらもUSDJPY H1・同じ検証期間(2017.01.01 - 2026.06.01)のバックテストで、取引数は629回と631回、平均保有時間は32:58:21と32:42:37でした。数字がここまで近いので、売買のタイミングはかなり重なっていると考えるのが自然です(1件ずつ突き合わせたわけではないので、どこまで一致しているかは断定できません)。両方を同時に動かしても、独立した1,260回分の検証で裏づけられた分散にはならない、と見ておくべきです。
独立性を損なう主なパターン
| パターン | 何が起きるか | 確認方法 |
|---|---|---|
| 同時建玉・ナンピン | 1回の判断が複数の取引として数えられる | 約定履歴で同じ時刻・同じ方向の約定を探す |
| 保有期間の重なり | 同じ値動きの中で複数の取引が決済される | 平均保有時間と取引間隔を比べる |
| 相関の高い複数銘柄 | 共通の要因(例: ドルの動き)で同時に勝ち負けする | 銘柄別の損益を日付ごとに並べる |
| 似たロジックのEAの併用 | ポートフォリオ全体で同じ賭けを重ねる | 2本のEAのエントリー日時を突き合わせる |
| 連敗の偏り | 負けが特定の時期にまとまって出る | 年別・月別の損益分布を見る |
複数銘柄を扱う ATLAS のようなポートフォリオ型では、銘柄の組み合わせそのものが分散の質を左右します。バックテストの1193取引のうち、どれだけが相関の低い局面から来ているかは、取引数だけ見ても分かりません。
具体的な確認手順
- 約定履歴をCSVで出す。 MT5のバックテストレポートの「約定」タブから出力できます。
- エントリー時刻でまとめる。 同じ足(H1なら同じ1時間)で同じ方向に入った取引を1グループにします。グループの数が「独立した判断の数」の目安です。
- 保有期間の重なりを見る。 平均保有時間が取引間隔より長いEAは、常に複数ポジションを持っている可能性があります。
- 日次損益で数え直す。 取引単位ではなく「1日の損益」を1サンプルとして勝率やPFを計算し直すと、同時建玉の水増しがかなり取れます。
- 併用するEAどうしを比べる。 2本の日次損益を並べて、同じ日に勝ち負けがそろっていないかを確かめます。
検証の基本的な考え方は EA・MT5ノウハウ にもまとめています。
限界と注意
ここまでの話にも限界があります。
- 相関は一定ではありません。 普段は相関の低い銘柄どうしでも、急変のときにはまとめて同じ方向に動きがちです。平常時のデータで「独立」に見えても、一番困るときにその前提が崩れることがあります。
- 日次にまとめると情報も減ります。 独立性に近づく代わりにサンプル数は小さくなり、別の意味で判断が難しくなります。どの単位でまとめるのが正しいかに決まった答えはありません。
- 私たちのEAも全部は数え直せていません。 この記事で紹介した手順を全EAに当てはめた結果は、まだ公開できる形になっていません。表示している取引数は、レポート上の約定の回数です。
- 独立性を確かめても利益が保証されるわけではありません。 分かるのは「その成績がどれくらい偶然で説明できるか」の目安だけで、将来の成績ではありません。
まとめ
- 取引数が同じでも、取引どうしに相関があれば統計的な信頼度は下がる
- 同時建玉・保有期間の重なり・相関の高い銘柄・似たロジックのEAの併用は、実質サンプル数を減らす
- 「独立した判断の数」はエントリー時刻でまとめたり、日次損益で数え直したりすると目安がつかめる
- 平常時に独立に見えても、急変時には相関が強まることがある
- 複数のEAを組み合わせるときは、銘柄や名前ではなく売買のタイミングが重なっていないかで判断する
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