MT5のヒストリー品質とは|実ティックとの関係と限界
先に結論から書きます。MT5のヒストリー品質は、「テストしたデータがどれだけ実際のティックに近いか」の目安です。「そのEAが将来も勝てるか」を示す数字ではありません。99%はデータの揃い具合が良いということで、戦略が良いという意味ではありません。逆に5%なら、レポートの損益曲線の大部分は、MT5が足データから作った「それらしいティック」の上で描かれた可能性が高いと考えるべきです。
私たちはEAを配布する側として、毎日のようにレポートを読んでいます。この記事では、品質の数字が何を示しているのか、どこから先は数字では分からないのかを整理します。
ヒストリー品質は何を測っているのか
テスターの「モデル」と切り離せない
MT5のストラテジーテスターには、価格の動きを再現する方法として次のようなモデルがあります。
- リアルティックに基づいたすべてのティック
- すべてのティック(1分足から生成)
- 1分足OHLC
- 始値のみ
ヒストリー品質がもっとも意味を持つのは、一つ目の実ティックモデルを選んだときです。このモデルでは、ブローカーのサーバーに保存されている実際のティックを使ってテストします。ただし、実ティックがない区間ではMT5が1分足からティックを生成して埋めます。私たちの理解では、ヒストリー品質は「テスト期間のうち、実ティックで再現できた部分の割合」の目安です。
99%と5%の違い
| 表示 | 意味すること(目安) | 読み手が考えるべきこと |
|---|---|---|
| 99%前後 | ほぼ全区間に実ティックがある | データの質は高い。ただしそのブローカーのデータであることに注意 |
| 中間の値 | 一部の期間だけ実ティックがある | 前半は生成ティック、後半は実ティックという混在を疑う |
| 5%前後 | 実ティックはごく一部 | 損益曲線の大半は生成ティック上の結果と考える |
5%のような低い値がよく出るのは、長期間のテストで、ブローカーが古い実ティックを保存していないときです。古い年は1分足からの生成ティックで、直近だけが実ティックという状態になります。レポートの損益曲線は1本につながって見えるので、境目は分かりません。
生成ティックで何が変わるのか
1分足から作ったティックは、1分の中の高値・安値の「順番」と「途中の動き」を推定で埋めています。そのため次のようなEAは結果がずれやすくなります。
- 数pips単位の利確・損切りを使うスキャルピング型
- 1分の中で指値・逆指値が両方とも約定しうる設定
- スプレッドが広がった瞬間を避けるフィルターを持つもの
反対に、H1やH4で数十時間ポジションを持つトレンドフォロー型は、1分の中の値動きが結果に与える影響が比較的小さい傾向にあります。たとえば私たちのMEGAMAX DONCHIAN(USDJPY H1)は平均保有32:58:21、BITCOIN COMET(BTCUSD H4)は平均保有63:51:39の戦略です。それでも「影響がない」とは言い切れません。そのため私たちは、品質の数字に頼るより、モデルを変えて結果を比べることを重視しています。
自分で確かめる手順
EAを選ぶときや、配布されているEAを手元で再検証するときは、次の順に見てください。MT5の基本操作はMT5セットアップにまとめています。
- モデルを「リアルティックに基づいたすべてのティック」にして実行する
- レポートのヒストリー品質を確認する(テスト期間を短くすると値が変わるかどうかも見る)
- 同じ期間を「1分足OHLC」でも実行し、PFや最大DDを比べる
- 大きく違うなら、そのEAは1分の中の値動きに強く依存している
- テスト期間を前半と後半に分ける
- 実ティックがある後半だけで成績が崩れていないかを見る
- スプレッドの設定を確認する
- 実ティックモデルでは記録されたスプレッドが使われる。固定スプレッドの結果と混同しない
- 操作ログ(操作履歴)にデータ不足の警告がないか見る
3番目の比較は、とくに効果があります。品質99%のレポートでも、OHLCで結果が逆転するEAは、実運用で約定がずれたときに崩れやすいと私たちは考えています。
ヒストリー品質の限界
ここからは、数字だけでは判断できない点です。都合の悪い話も含めて書きます。
- 99%でも「そのブローカーのティック」でしかない。 業者が違えばスプレッドの広がり方も配信頻度も違います。A社で99%のレポートが、B社の口座での成績を保証するわけではありません。業者による差はFX業者比較も参考にしてください。
- スリッページや約定拒否は再現されない。 実ティックでも、テスターでは「その価格で約定した」前提です。指標発表時などの滑りは入りません。
- 品質が高くても期間が短ければ意味が薄い。 直近1年だけで99%のテストは、長期で品質が低いテストより信頼できるとは限りません。相場の局面が一つしか入っていないからです。
- 過剰最適化は品質と関係なく起こる。 データがどれだけ正確でも、パラメータをその期間に合わせ込めば結果は良く見えます。
- 品質が低い区間の「本当の成績」は分からない。 生成ティック上の結果が実際より良かったのか悪かったのかは、後から確かめる手段が限られます。私たちにも分かりません。
私たちのEAには、長期間の検証を載せているものがあります。たとえばGOLD NEURONの期間は2004.01.01 - 2026.09.01です。古い区間のティックがどこまで実データかはブローカーの保存範囲によるので、期間が長いことを品質が高いことの裏付けとして読まないでください。各EAの数値は実測ランキングで一覧できます。
まとめ
- ヒストリー品質は「実ティックでどれだけ再現できたか」の目安で、EAの優劣を示す指標ではない
- 低い値は、長期テストで古い実ティックがなく、1分足からの生成ティックで埋められていることが多い
- 短期売買のEAほど、生成ティックの影響を受けやすい
- 品質の数字よりも「実ティックとOHLCで結果が大きく変わらないか」を確かめる方が実用的
- 99%でも、別のブローカーの成績、スリッページ、将来の相場は保証されない
バックテストの読み方はEA・MT5ノウハウでも続けて取り上げていきます。
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