モンテカルロ検証でDDの「運の幅」を測る
目次
結論:BTの最大DDは「1回分の結果」にすぎない
バックテストのレポートに出る最大ドローダウン(DD)は、過去の値動きがたまたまその順番で並んだ場合の値です。勝ちと負けの中身が同じでも、並び順が違えばDDは浅くも深くもなります。
モンテカルロ検証は、取引の並び順を何度も入れ替えて、DDがどのくらいの範囲に散らばるかを見る方法です。私たちは、EAを選ぶときは「BTの最大DD」を1つの点として見ず、分布の中のどこにあるかとして見ることをおすすめしています。ただし、この方法で分からないことも多くあります。後半で限界も書きます。
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仕組み:順番を入れ替えても総損益は変わらず、DDだけが変わる
シャッフルで何が変わるのか
固定ロットであれば、取引の順番を入れ替えても合計損益は同じです。PFや勝率も変わりません。資金に対して一定の割合でロットを決める複利運用でも、損益を掛け算でつなぐので最終残高は同じになります。
変わるのは途中の経路です。負けが偶然かたまって並べばDDは深くなり、勝ちと負けが交互に来ればDDは浅くなります。連敗の長さも並び順で変わります。
勝率が低いEAほど幅が広がりやすい
たとえば ATLAS は、バックテストで勝率33.2%、最大連敗13でした。勝率が低いトレンドフォロー型は、負けが続く並び方が起こりやすい傾向があります。並びを入れ替えれば、BTで記録した13連敗より長い連敗が出る組み合わせも当然ありえます。「BTで最大連敗13だったから、それ以上は来ない」とは言えません。
確認手順:自分でやる場合の流れ
MT5のテスターには、取引順序をシャッフルする機能が標準で入っていません。そのため、レポートの取引一覧を書き出して表計算ソフトやスクリプトで処理するのが現実的です。
- MT5のバックテストレポートから、決済済み取引の損益一覧を書き出す
- 損益の並び順をランダムに入れ替える
- 入れ替えた順に残高曲線を作り直し、最大DDと最大連敗を記録する
- 2〜3 を1,000回程度くり返す
- 記録したDDを小さい順に並べ、中央値と上位5%付近の値を見る
- BTで出た最大DDが分布のどこにあるかを確認する
BTの最大DDが分布の浅い側にあれば、過去データは「運が良い並び」だった可能性があります。その場合、運用資金は分布の深い側を前提に決めたほうが安全です。
方法ごとに分かること
| 方法 | やること | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|---|
| 順序シャッフル | 同じ取引を並べ替える | DD・連敗の振れ幅 | 取引の中身が変わる影響 |
| 復元抽出(リサンプリング) | 取引を重複ありで選び直す | 損益合計そのものの振れ幅 | 相場の局面が変わる影響 |
| ランダムスキップ | 一部の取引を抜く | 約定漏れや停止に対する耐性 | 停止が負けの局面に集中する場合 |
| コスト上乗せ | 1取引ごとに不利な値を引く | スプレッド悪化への耐性 | 実際のコストの変化の仕方 |
シャッフルだけだと最終損益は1通りしか出ません。利益側の幅も見たい場合は、復元抽出を併用します。
限界と注意:モンテカルロは万能ではない
取引が互いに独立だという前提
シャッフルは「各取引は互いに無関係」とみなしています。実際の相場には、ボラティリティが高い時期・トレンドが出ない時期がまとまって来ます。負けが集中するのは偶然ではなく、相場の局面が原因であることが多いです。ランダムに並べると、こうした「負けが集まる構造」が薄まり、DDを実際より浅く見積もるおそれがあります。
決済損益しか見ていない
取引一覧から作る残高曲線には、保有中の含み損が入りません。たとえば GOLD KING v6 は、バックテストで残高DDが7.45%なのに対し、含み損を含む有効DDは91.3%でした。こうしたEAで決済損益だけをシャッフルすると、リスクを大きく見誤ります。ナンピンやグリッド系、保有時間の長いEAでは特に注意してください。
元のデータの外は見えない
シャッフルは、過去に起きた取引の組み換えにすぎません。検証期間に一度もなかった相場(急な制度変更、流動性の枯渇など)で起きる損失は、何回まわしても分布に出てきません。取引数が少ないEAは、元の標本が小さいので分布そのものも当てになりにくくなります。
「上位5%のDDまで耐えられる資金にすれば大丈夫」という保証はありません。分かるのは、あくまで「過去の取引を並べ替えた範囲での運の幅」です。
まとめ
- 1本のBTの最大DDは、1つの並び順から出た1つのサンプルにすぎない
- 取引順序をシャッフルしても総損益・PF・勝率は変わらず、DDと連敗の長さが変わる
- 1,000回程度くり返してDDの分布を作り、BTの値が分布のどこにあるかを見る
- 勝率が低いEAほど、BTより長い連敗が出る並び方が起こりやすい
- 局面による負けの集中・含み損・検証期間外の相場は、シャッフルでは捉えられない
- 資金とロットは、分布の深い側を前提に余裕をもって決める
各EAの最大連敗や残高DD・有効DDは 全EAの実測ランキング で一覧にしています。勝率34.5%のトレンドフォロー型である DONCHIAN ENGINE の取引一覧は、シャッフル検証の練習用に使いやすい題材です。検証方法のほかの記事は EA・MT5ノウハウ にまとめています。
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