PF 7・勝率92%の罠 — 派手なバックテストEAを見抜く5つのチェックポイント
目次
- なぜ「PF 7、勝率92%」が異常なのか
- 数学的な感覚
- 実例: 「異国の殴り込みGOLD_V5」の数字
- バックテスト数値の作り方 — 4つのパターン
- パターン1: 含み損非反映グリッド
- パターン2: 損切を極端に遠くに設定
- パターン3: ナンピン + 平均化
- パターン4: カーブフィット最適化
- 買う前の5つのチェックポイント
- チェック1: ロジックが開示されているか
- チェック2: バックテストの「残高曲線」と「Equity曲線」が両方表示されているか
- チェック3: 「最大ロット使用量」と「最大連敗時の保有ポジション数」
- チェック4: 22年BTの「カーブフィット検証」が公開されているか
- チェック5: ロットサイズ計算ロジック
- それでも「派手な数字EA」を使いたい場合
- まとめ — 健全な数字、健全なEA
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PF 7・勝率92%の罠 — 派手なバックテストEAを見抜く5つのチェックポイント
「プロフィットファクター 7.07、勝率 92.24%、最大ドローダウン 1.85%、22年バックテスト」
販売されているEAの広告でこんな数字を見たことはないでしょうか。「これは凄い」「絶対買うべき」と思った瞬間に、立ち止まってください。この数字の組み合わせは、伝統的な単発エントリーEAでは数学的にほぼ不可能です。
数字が嘘とは限りません。「数字の作り方」に仕掛けがあります。この記事では、派手なバックテストの裏で何が起きているか、買う前にどう見抜くかを解説します。
なぜ「PF 7、勝率92%」が異常なのか
数学的な感覚
普通のトレンドフォロー型EA(EMAクロス + ATRベースSL/TP)の現実的な数値は次の範囲に収まります。
| 指標 | 健全な範囲 |
|---|---|
| 勝率 | 40-55% |
| プロフィットファクター | 1.1 - 1.8 |
| 最大DD | 8 - 25% |
| RR (リスクリワード) | 1:1.5 - 1:2.5 |
これに対し「勝率92%・PF 7」を達成するには次のいずれかが必要です。
- 超浅い利確と無限保有(含み損になっても損切せず、わずかな反発で利確)
- 複数ポジションを同時保有して損益を相殺(一つが負けても他で勝ち、合計で利確)
- 損切を極端に遠くに置く or 完全になくす(ほぼ全てのトレードを「勝ち」にできる)
- ナンピン・マーチン・グリッドの変種(同方向に何度も建て、平均化して利確)
これらは 「バックテスト上は美しいが、実運用で1回の急変動で口座が飛ぶ」 タイプの設計です。
実例: 「異国の殴り込みGOLD_V5」の数字
実在する販売EAの公表数値を例にします(販売者ページからの引用)。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| プロフィットファクター | 7.07 |
| 勝率 | 92.24% |
| 最大DD | 1.85% (22年BT) |
| 取引数 | 3,894回 |
| 連敗最大 | 5 |
| 価格 | ¥49,000 |
このEAの公式FAQには 「ナンピンやマーチンロジックは搭載されておりません」 と明記されています。しかし同じFAQに 「複数ポジションを保有する都合上、ナンピンのように見える場合があります」 と注意書きがあります。
さらに「12種類の取引モード」の中には次の選択肢があります。
- 基準ロット数固定
- 複利ロット数(自動計算)
- 負け数倍率による調整 ← 負けたらロットを増やす
- 勝ち数倍率による調整 ← 勝ったらロットを増やす
- ポジション数倍率による調整
つまり「マーチン搭載なし」というのは デフォルト設定ではOFF という意味であって、モードを切り替えれば負け数に応じてロットを増やせる のです。これは事実上マーチンの変種です。
そして「複数ポジション保有」「ナンピンに見える動き」と組み合わさることで、勝率92%が実現できる設計になっています。
これらは違法でも嘘でもありません。表現の工夫です。
バックテスト数値の作り方 — 4つのパターン
派手な数字を作る代表的なテクニックを開示します(私たちも同じ手法でPF 7+を作ることは技術的に可能です)。
パターン1: 含み損非反映グリッド
- ある価格帯に5本の指値を仕掛ける(例: 10pip間隔の買い指値)
- 価格が下がる → 指値が約定 → 含み損ポジションが増える
- 価格が反発 → 上にある指値から順次微益決済
- 一番下のポジションは「いつかは反発するだろう」で保有継続
- バックテスト終了時に含み損ポジションは「未決済」扱いで損失計上されない
この設計のバックテスト結果は PF 5-15、勝率85-95%、DD 1-5% と「最強」に見えます。しかし実運用すると、一度の大相場で含み損ポジション全部が証拠金維持率を破壊 します。
パターン2: 損切を極端に遠くに設定
SL = ATR × 10 (通常は ATR × 1.5-2.0)
TP = ATR × 0.3 (通常は ATR × 2.0)
これだと「ほぼ全てのトレードが小さな利確で終わる」設計になります。年に数回起こる大暴落で損切に到達するときに 1回で過去全部の利益を吹き飛ばす ことになりますが、22年のBTでその大暴落が偶然「過去」だけに集中していれば、見かけ上は綺麗な結果になります。
パターン3: ナンピン + 平均化
- 最初のポジションが含み損になる
- 同方向にロットを1.5倍にして追加(平均建値を下げる)
- さらに含み損が増えたら、もう一度1.5倍で追加
- いずれ反発で平均建値を超えたら全ポジ一括決済
過去の22年データで「永遠に反発しないトレンド」が偶然存在しなければ、このEAは100%勝率に近づきます。が、いつ来るかわからない一発の大相場で口座が消える 数学的事実は変わりません。
パターン4: カーブフィット最適化
22年のデータで、数千通りのパラメータを試して 「過去22年で最も儲かった組合せ」 を選ぶと、必ずPF 5+のEAが作れます。ただしそれは未来には機能しません(これは別記事「過剰最適化(カーブフィット)を避ける方法」で解説しています)。
買う前の5つのチェックポイント
「PF 7」のEAを買うかどうか迷ったら、購入前に以下の5つを確認してください。
チェック1: ロジックが開示されているか
販売ページに「EMAクロス + ATR SL」のような具体的アルゴリズムが書いてあるか確認します。
- ✅ 明示されている: EMA37/80クロス、ボリンジャー上抜けブレイクアウト、など
- ⚠️ 「数十のインジケーターを臨機応変に」「秘密のロジック」「AIが判断」: ブラックボックスです。問題発生時に原因特定不能。
ブラックボックスEAは買わないのが鉄則です。
チェック2: バックテストの「残高曲線」と「Equity曲線」が両方表示されているか
バックテストレポートには2種類のグラフが出せます。
| グラフ | 内容 |
|---|---|
| 残高 (Balance) | 決済済みポジションの累計損益のみ |
| Equity (有効証拠金) | 含み損益も含む実質的な口座価値 |
含み損抱え型EAは 残高曲線は綺麗な右肩上がりだが、Equity曲線は時折大きく落ち込む 特徴があります。残高曲線しか表示されていないEAは、含み損を隠している可能性があります。
販売者にEquity曲線の提示を求めましょう。出せない販売者は購入を見送るべきです。
チェック3: 「最大ロット使用量」と「最大連敗時の保有ポジション数」
ナンピン/マーチン系EAの正体を暴く最も簡単な質問:
- 「最大連敗時、合計ロットはいくつになりますか?」
- 「最大連続ナンピン回数は?」
- 「MaxNanpinCount のパラメータはありますか?」
答えが曖昧 or 「複数ポジションを保有することがあります」「市場状況に応じて」のような表現の場合、グリッド/ナンピン系です。
チェック4: 22年BTの「カーブフィット検証」が公開されているか
健全な開発者は 「Train (前半10年) / Test (後半10年) 別の数値」 を公開します。
| 期間 | 健全なEA | カーブフィットEA |
|---|---|---|
| Train (前半) | PF 1.6 / DD 8% | PF 7.0 / DD 1.8% |
| Test (後半) | PF 1.4 / DD 10% | PF 0.8 / DD 35% |
Test期間で性能が崩れるEAは 過去にだけ最適化されたカーブフィットEA です。実運用では「これからの未来」で動くわけなので、Test性能こそが本質的な指標です。
チェック5: ロットサイズ計算ロジック
設定パラメータ画面のスクリーンショットを要求してください。以下の名前のパラメータがあるEAは要警戒です。
LotMultiplier(ロット倍率)MartingaleStep(マーチンステップ)NanpinDistance(ナンピン距離)GridStep(グリッドステップ)RecoveryMode(回復モード)MaxPositionsが10以上(複数ポジ前提)UseAveraging(平均化使用)
これらが存在するのに「ナンピン/マーチン無し」と公式説明している場合、表現上の言い逃れの可能性が高いです。
それでも「派手な数字EA」を使いたい場合
正直に言えば、ナンピン/グリッド系EAも 正しく使えば一定の利益は出ます。FXEAでもナンピンEA「KAMIKAZE」「TETSUBEKI」「HEDGE_RECOVERY」「ATR_DYNAMIC」を提供しています。
ただし、必ず以下のルールを守ってください。
- 失っても問題ない金額のみ投入 — 総資金の5%以下
- 毎日利益を出金 — 残高に貯めるといつか全消失
- 破産は織り込み済み — 数学的に必ず破綻する設計と理解
- 「破産前提・毎日出金型」と明示されているEAを選ぶ — 隠しているEAより誠実
派手な数字を「凄い」と思って素直に資金を入れると、ナンピン/グリッドの典型的な末路 — 数ヶ月の利益が一度の急変動で全部吹き飛ぶ — を辿ることになります。
詳細はナンピンEA運用ルールで解説しています。
まとめ — 健全な数字、健全なEA
FXEAでは、ロジック完全開示・MQ5ソース公開・実MT5データでのバックテスト結果公開を行っています。
その結果、私たちのEAの数値は次のような「地味」なものになります。
| EA | PF (実測) | DD% | 年率 |
|---|---|---|---|
| GOLD EMA ATR | 1.23 | 15.1% | +6.5% |
| GOLD BB Breakout | 1.45 | 6.4% | +11.4% |
| AUDUSD Range | 1.30 | 14.2% | +10.6% |
| XAGUSD Silver | 1.30 | 10.9% | +11.4% |
これらの数字は「PF 7」に比べれば見劣りしますが、1回の急変動で口座が飛ぶリスクがほぼゼロ という安全性と引き換えに得られた現実的な数値です。
EA選びの判断軸はシンプルです。
- 派手な数字で資金を増やしたい → ナンピン/グリッド系を「破産前提」で使う (毎日出金必須)
- 長く運用したい → 単発エントリー型を「年率5-15%」の現実値で受け入れる
両方を満たすEAは数学的に存在しません。販売広告で「両方満たす」と謳っているEAは、何かを隠しています。
最強のEAは存在しませんが、自分の運用スタイルに合った、ロジックが開示された、検証可能なEA は存在します。FXEAは後者の提供を目指しています。
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