EA ポートフォリオ戦略 — 複数EAの組み合わせでリスク分散
2026-05-18
「1つの優れたEAを見つけて運用する」というアプローチは、そのEAが得意とする相場環境が終わったときに大きなドローダウンを引き起こします。機関投資家が複数の非相関戦略を組み合わせるように、個人のEA運用でもポートフォリオの発想が重要です。
なぜ複数EAを組み合わせるのか
EAのパフォーマンスは相場環境に依存します。トレンドフォロー系EAは強トレンド相場で大きく利益を出しますが、横ばい相場では負けが続きます。一方、レンジ・ブレイクアウト系EAはレンジ相場後のボラ拡大に強いですが、トレンド中は過剰な損切りが発生します。
❌ 単一EAの問題点
- 相場環境が変わると一気にドローダウン
- 1年の60%以上は「得意な相場」ではない
- 心理的に運用継続が困難になりやすい
- 1戦略への依存でリスクが集中する
✅ 複数EAの利点
- ドローダウンが時間的に分散される
- どの相場環境でも一定の収益機会
- 最大ドローダウンを数学的に削減
- 1つのEAが低迷しても運用を継続できる
相関係数とは何か — 組み合わせの鍵
相関係数(-1〜+1)は2つのEAのリターンがどれだけ同じ動きをするかを示します。低い相関係数ほどポートフォリオ効果が高く、ドローダウンが重なりにくくなります。
| 相関係数 | 意味 | ポートフォリオ効果 | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| 0.0〜0.3 | ほぼ無相関 | DD 平滑化効果が最大 | ⭐⭐⭐ 理想的 |
| 0.3〜0.6 | 低〜中相関 | 一定のリスク分散効果あり | ⭐⭐ 許容範囲 |
| 0.6〜0.8 | 中〜高相関 | 分散効果が小さい | ⭐ 注意が必要 |
| 0.8〜1.0 | 高相関 | 2倍のリスクを取るのと同等 | ❌ 非推奨 |
当サイトの3戦略ポートフォリオ構成例
当サイトで配布している XAUUSD H1 の3つの EA は、相互に異なる市場状態で利益を出す設計になっています。
収益の安定的な柱
強いトレンド相場で高パフォーマンス。10年BT実績 PF1.30。v2でRR・フィルターを改善。
得意な相場
ADX高い強トレンド相場
苦手な相場
ADX低い横ばい相場
DD平滑化・補完役
アジア時間レンジ→ロンドンオープンのブレイクアウト。EMA系とは独立した時間帯アノマリー。
得意な相場
欧州参入で方向が明確な日
苦手な相場
アジア時間に大きく動いた日
高精度順張り・利益エンジン
D1トレンド確認+H1プルバックで精度の高い順張り。部分決済で利益を確保しながら伸ばす。
得意な相場
D1でトレンドが明確な相場
苦手な相場
D1もH1もトレンドなしのレンジ
ロット配分とリスク管理の実践
複数EAを動かすとき、最も重要なのは合算のリスクが許容範囲を超えないことです。各EAにそれぞれ「1回あたりリスク1%」を設定すると、3つのEAが同時にエントリーした場合に合計3%のリスクになります。
| シナリオ | 各EAリスク | 最大合算リスク | 推奨用途 |
|---|---|---|---|
| 保守的(推奨) | 0.5% | 〜1.5% | 3EA同時稼働・安全運用 |
| 標準 | 0.7% | 〜2.1% | バランス型 |
| 積極的 | 1.0% | 〜3.0% | EAの稼働を確認済みの場合のみ |
よくある間違い
❌ 同じ通貨ペアに同じ系統のEAを複数入れる
例:GOLD EMA ATR + GOLD ADX Filter を同時稼働。両方ともトレンドフォロー系のため相関が0.8以上になり、リスクが2倍になるだけで分散効果はありません。
❌ MagicNumber を同じにする
異なるEAが同じMagicNumberを使うと、一方のEAが他方のポジションを決済する事故が起きます。必ず別々の値を設定してください。
❌ バックテスト期間が異なるEAを同列に評価する
10年BTのEAと2年BTのEAを比較してもPFや勝率は意味が異なります。必ず同じ期間・同じ条件で再検証してから組み合わせを判断してください。
❌ ドローダウンが重なったときに1つのEAを止める
両方が同時に負けたときに心理的に「負けている方を止めたくなる」ですが、これはポートフォリオの崩壊です。事前に合算DDの許容範囲を決めておき、そこに達したときのルールを設定することが重要です。
FAQ
Q: 何つのEAを同時に動かすのが最適ですか?
A: 検証済みEA(バックテスト10年+フォワードテスト4週間以上)であれば2〜4つが現実的です。それ以上になると管理が複雑になり、各EAへの適切な注意が払えなくなります。初めてなら安定稼働中のEA1本から始め、検証しながら段階的に追加することを推奨します。
Q: 異なる通貨ペアのEAを組み合わせた方がいいですか?
A: 通貨ペアが違っても、同じ市場環境(リスクオン/リスクオフ)で同じ動きをする場合があります。例えばGOLD(XAUUSD)とドル円は、ドル強弱に影響されるため相関が生じることがあります。通貨ペアの多様化だけでなく、戦略の種類(トレンド系/ブレイクアウト系/レンジ系)を分散させることが本質的な分散です。
Q: 相関係数はどうやって計算しますか?
A: Excelのデータ分析ツールやPythonの`pandas.DataFrame.corr()`で計算できます。各EAの日次損益(日ごとの+/-)をリスト化し、それらの相関係数を求めます。ただし、同じ期間のバックテストデータが必要です。MT5 Strategy Testerのレポートを日次でエクスポートして使用できます。
Q: 片方のEAが大幅なドローダウンになったらどうすれば良いですか?
A: 事前に設定した「許容DD」を超えた場合のルールに従うことが重要です。例えば「1つのEAで口座残高の15%を超えるDD → 一時停止してパラメーター再確認」のようなルールを運用開始前に決めておきます。感情的な判断は避けてください。
Q: 同じ口座で複数のEAを動かせますか?
A: はい、可能です。ただし各EAのMagicNumberを必ず別々の値に設定してください。MT5は同じチャートでも、MagicNumberで各EAのポジションを識別します。また、口座の証拠金維持率が合算ポジションで圧迫されないよう注意してください。
Q: 当サイトのEAポートフォリオに追加で他社のEAを入れてもいいですか?
A: 可能ですが、他社EAとの相関も確認してください。特に同じ通貨ペアで似た戦略のEAを複数入れると、意図せずリスクが集中します。他社EAを追加する際は、自社EAと同じ期間のバックテストデータを比較して相関を確認してから判断することを推奨します。
Q: Beta EAはポートフォリオに入れていいですか?
A: MT5 Strategy Testerで10年バックテストを実施し、PF1.2以上・取引数100件以上・最大DD15%以下の条件を満たすことを確認してからフォワードテストに移行してください。フォワードテストで4週間以上、バックテストと近い水準のパフォーマンスを確認できた後に、小額(リスク0.3%以下)から本番口座で稼働開始することを推奨します。
Q: ポートフォリオ全体の目標PFはどのくらいを目指すべきですか?
A: 各EAのPFを単純に加算することはできません。低相関EAを組み合わせると、ポートフォリオ全体のドローダウンは減少しますが、利益の合計もやや抑えられます。目標としては「各EAが単独でPF1.3以上」「ポートフォリオ全体の最大DDが20%以下」「シャープレシオ0.5以上」程度を一つの基準にしてください。